旧優生保護法とは
文・強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト(歩む兵庫の会関連団体)
1-1 概要
●1948 年に作られ、1996 年に母体保護法に改正されるまで存在した法律。
●第二次世界大戦中にナチ・ドイツの影響下、総力戦を戦い抜くとして成立した国民優生法 を大きく踏襲、強化して制定された
●条文
・第 1 条 「この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする」
→人間の命を生まれてくるべきものと生まれてくるべきでないものとに区別する優生思想に基づく。この法律によって、障害や遺伝する病気をもつ人などに、子どもをつくることをできなくする手術(不妊手術)やおなかの胎児が生まれなくなる手術(妊娠中絶)を受けさせることが認められていた。
→優生手術と人工妊娠中絶の合法化
・第 3 条 第一項 医師は、左の各号の一に該当する者に対して、本人の同意並びに配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含む。以下同じ。)があるときはその同意を得て、優生手術を行うことができる。但し、未成年者、精神病者又は精神薄弱者については、この限りでない。(以下略)
→遺伝性の疾患、障害を持つ人に対し、本人の同意のもと不妊手術を認める。
・第 4 条 医師は、診断の結果、別表に掲げる疾患に罹っていることを確認した場合において、その者に対し、その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請しなければならない。
→遺伝性の疾患、障害を持つ人に対し、本人の同意がなくても不妊手術を認める。
・第 12 条(1952 年 新設) 医師は、別表第一号又は第二号に掲げる遺伝性のもの以外の精神病又は精神薄弱に罹っている者について、精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)第二十条(後見人、配偶者、親権を行う者又は扶養義務者が保護義務者となる場合)又は同法第二十一条(市町村長が保護義務者となる場合)に規定する保護義務者の同意があった場合には、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請することができる。
→遺伝性でない疾患、障害を持つ人に対しても、本人の同意なしに不妊手術を認める
1-2 被害の実態概要
●被害件数
旧優生保護法下での優生手術
本人の同意なし(4 条、12 条に基づく手術) 16,475 人
本人の同意あり(3 条に基づく手術) 8,518 人
出典:2018 年5月 24 日厚生労働省提出資料
※形式上は「本人の同意に基づく」とされる不妊手術(法第 3 条)は実質的には強制的な状況下で行われたものも多い
●被害者の 7 割が女性
●最年少は宮城県の 9 歳。毎年のように 11 歳が手術を受ける
●都道府県別では 1 位が北海道(2593 人)、2 位が宮城県(1406 人)
1-3 国の責任
・国会が全会一致で優生保護法を定めた
・国会から政府へ、予算増や手術対象者拡大を求める声が上がった
・厚生労働省による身体の拘束、麻酔 薬施用又は欺罔の肯定
強制不妊手術の実施にあたり手術を受ける者が拒否した場合に
「真に必要やむを得ない限度において身体の拘束、麻酔 薬施用又は欺罔(だますこと)等の手段を用いることも許容される と解すべきである」
(1947 年 10 月 11 日 法務府の公式見解)
→法が廃止される 1996 年まで同様の通知が効力を持っていた
・国内外からの批判があり、1996年に優生条項を排除し、優生保護法を母体保護法に改正したあとも、被害を補償する法律をつくらなかった
・被害者からの訴えに「当時は合法だった」と繰り返し、謝罪や補償をしなかった
⇒人権を侵害し、優生思想を広めた。
・2019年4月に制定されたいわゆる「一時金支給法」は、個別通知をしない、お詫びの主語が曖昧、金額が320万円と低いなど不十分なもの
・今も、裁判で争う姿勢を見せ続けている